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がんになるって、どんなこと?

大学病院のがんセンター長が、子どもたちへの『がん教育』に目覚め、教員免許まで取得して伝えたいこととは?

いざ、学校へ!①

養護教諭の特別な思いもあり、こうして私のがん教育はスタートすることが出来ました。今でこそ、がん教育が自分のライフワークの一つであると公言していますが、もし、彼女の申し入れがなかったら、私はがん教育を諦めざるを得なかったのではないかと思います。その意味では、彼女は私にとって救世主とも言えます。人生は全く分からないものです。

さて、学校からがん教育の許可をいただいて、やっと一安心したものの、私はまたまた、すぐに現実に引き戻されました。保健室で養護教諭と具体的な授業の相談を始めた時に、まず最初に私の授業案を説明するように求められたのです。

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すでに頭の中では、「がんを通じていのちの教育をしたい!」という最終的な目標はイメージしていましたから、例によって能天気に、「まず最初にこんなことを説明して、そのあと子どもたちの反応を見ながら次の話に進んで、もし理解してくれるなら、心に響くような話をいくつか入れて・・・・」、「先生と適当に掛け合いをしながら、あとはその場の雰囲気で・・」、などと伝えたら、それまでにこやかに聞いてくれていた彼女の顔が急に険しくなりました。

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意外な反応に戸惑う私に、彼女は「林先生、学校では授業を思い付きで行うことはできません!」と真顔でビシッと言いました!
私は彼女の指摘に、内心焦りました。そう言われてみると、同じ教育現場でも、大学病院と小学校での教育が同じはずはありません。私は学校の先生たちがどんな風に授業をしているのか、そして子どもたちがどのような反応をするのかも、何一つ知らなかったのです。

自分が大学で行っていた授業は、旧態依然とした系統講義でした。医学部での授業は医学教育カリキュラムに沿って、大まかな教育内容は決められているものの、小・中・高の学習指導要領のように、きめ細かなものではなく、授業は自分が言いたいことをスライドにまとめ、アドリブで適宜行っているだけでした。

小学校の教育現場は、大学とは全く異なっていました。教育指導要領には、法的拘束力がありますから、授業内容は教育指導要領を遵守しなければなりません。しかも実際の授業のためには、授業の目当て、内容、構成などを詳細に記し、分刻みの進行スケジュールまでも事前に決めた授業案が不可欠だったのです。

今なら当然のことだと思えるのですが、その時の私の感想を正直に表現すると、「えー、なんでそんな面倒なこと言うんだろう」、って感じだったかもしれません。

無言の私に彼女は、「まずは一度、実際の授業を見てください!」と、促しました。

お知らせ

お知らせ

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突然のお知らせで恐縮ですが、がん教育とがん啓発の本を、明日2月25日に出版します!
https://www.amazon.co.jp/dp/4860087186

私の言いたいことや伝えたいこと、その全てが、この一冊の本の中にあります。半年がかりで書き上げた、自分としては渾身の企画本です。がん医療やがん教育に全く関係のない、一般の方々や子どもたちでも、この本を読んでいただければ、リアルながん体験をしたのと同じような学びが得られるように、文章や単語の隅々まで気を配り、自分が考えうる限りの想いを詰め込みました。

「なんだ、このブログは、本を売って儲けるための宣伝なんだ!」、とお思いになる方が多いかもしれませんが、決してそうではありません。この本の執筆は私にとっては神聖な作業であり、卑しい気持ちにならないように、印税はゼロで契約しました。昨年出版した近藤先生との対談本も、印税は本自体で受け取って、患者さんや若手の医療者、市民の皆様に全て差し上げました。現金は一円も頂いていませんが、今回は、さらに特別な思い入れがあったので、一人でも多くの方々に読んでいただけるように、出版社には、印税分を本自体のクオリティーの向上と広告に振り分けてもらうように依頼しました。

そして、本文に登場する3人の患者さんは、全て本当の患者さんたちです。読み進めるうちに、読者が身近な誰かに思いを馳せ、がんを通して、改めていのちや家族について考えていただけるならば、作者として、こんな嬉しいことはありません。

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実際にお手にとっていただければ、すぐにお分かりいただけると思うのですが、表紙は図書館に置きやすいようにハードカバーにして、紙質やインクの色、イラストなどにも徹底的にこだわりました。
もはや、この本は、私の分身です。ぜひご一読ください。
ちなみに、このブログは、今後も、ず~っと続けますよ!

手を挙げてくれたのは......③

がんについて がん教育について

f:id:doctor-teacher:20170219215634j:plain終末期医療に携わる医療者のなかでも、特に看護師は激務です。患者さんに深く寄り添って看護する一方で、その家族や医師との間で、非常に繊細な調整的役割を担います。そのため、患者さんに対する思い入れが深くなりすぎて、業務の範疇を超えてしまったり、医師との考え方のギャップに悩んでしまうことも多く、患者さんが亡くなったり、医療者間の信頼関係が崩壊した際に、バーンアウト、いわゆる燃え尽き症候群になってしまうことがよくあります。

私の専門の一つは緩和ケアですが、緩和病棟を有する病院では、どこでも、看護師のストレスマネージメントには、非常に苦心しています。

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一般の方からは、「プロなんだから、それぐらい当たり前だろう!」とお叱りを受けそうですが、看護師だって人間です。心が疲れ果てることだってあります。終末期医療に直面し続ける、緩和病棟やホスピスの看護師は、心身の消耗が激しく、現在でも、他の病棟に比べて在職期間が明らかに短いのです。

 

日本看護協会も懸命に彼女らを支えようとしています。全国各地で、緩和ケアや終末期医療に関する研修会を数多く開催しているほか、21分野ある認定看護分野の中に「緩和ケア認定看護師」資格をおき、様々な困難に耐えうる専門職の養成も積極的に行っています。

認定看護師とは、看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める615時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで、ようやく取得できる立派な資格です。2016年現在、全国で約2000名の緩和ケア認定看護師が、自分の病院だけでなく、院外でも活発に活動しています。今後もっと認定看護師が増えてくれば、終末期医療の現場は大きく変わってくるのではないかと期待しています。

ただ、私に声をかけてくれた養護教諭は、私とほぼ同年代でした。われわれが医療の世界に飛び込んだ30年前には、医療職に対するケアなどという概念は存在しませんでしたから、きっと一人で思い悩んだんだと思います。残念ながら、彼女は看護師としては、まさに燃え尽きてしまったのでしょう。

「看護師は辞めても、やっぱり誰かを助けるような仕事がしたくて、しばらく思い悩んでいたんですが、養護教諭への道があることに気づき、一念発起して試験を受けて合格し、それからは30年間、ずっと学校で仕事をしてきました。」

f:id:doctor-teacher:20170219221628j:plain「でも、自分でもどこかに何か引っかかっていました。」

「だから、この前、先生のがん教育のプレゼンがあると聞いた時、説明会に行く前から、うちの学校でやれたらいいなって思っていたんです。」

「やっぱり、もう一度医療の世界にもかかわりたい、って.....」

初めてこのブログにいらした方は、ぜひ最初からお読み下さい。