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がんになるって、どんなこと?

大学病院のがんセンター長が、子どもたちへの『がん教育』に目覚め、教員免許まで取得して伝えたいこととは?

手を挙げてくれたのは......②

がん教育について

「私、実は看護師だったんです.......』と、おもむろに彼女は話し始めました。
「看護学校を卒業して、最初に配属された病棟が、がん患者さんたちがたくさん入院している病棟だったんです。」

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「当初は看護師としての使命感に燃えていました。からだの痛みや不調に苦しむ、がん患者さんの役に立ちたくて、朝から晩まで心を込めて、一生懸命看護をしました。」

「でも、仲良くなった患者さんたちが、次々と亡くなっていくような病棟で仕事をしていくのは、本当に切なくて、辛くて.......そして、だんだんに、そこにいるのが耐えられないほど、苦しくなってきて.......」

「ある日、私にはもうこの仕事はできないな、と思ったんです。」
「気が付いたら、病院を辞めていました.....」

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思いもよらぬ、切なすぎる告白に、私は返す言葉もありませんでした。

手を挙げてくれたのは......①

がん教育について

 その電話は、ある小学校の養護教諭の先生からの、「うちの学校で授業をしてみませんか?」という、お招きのお電話だったのです!!

私は、ただうれしくて、うれしくて...........実際に自分がどう応対したのか、よく覚えていません。
四面楚歌だと思っていたのに、たった一人だけ申し出てくれたことに、何度もお礼をいいました。
ともかく一度お話を聞きたいと思って、アポイントをとって、早速に学校に伺いました。

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その学校は、山の手の高級住宅街の一角にあり、落ち着いた雰囲気の学校でした。校舎を入って受付を済ませると、まっすぐ保健室に向かったのですが、保健室は、学校で一番日当たりのよい、一階ど真ん中の、校庭に面した一等地にありました。

養護教諭の先生は、午後の日差しが差し込む暖かい部屋で、私を迎えてくれました。

私は、ご連絡いただいたことに、心から感謝していること、あのプレゼンは、独りよがりで、今は皆さんに申し訳なかったと思っていること、それでも自分には、子供たちに伝えたいことがたくさんあること、是非とも、この学校で、がん教育のチャンスをいただきたいこと、など、凝りもせず、矢継ぎ早にお話ししました。

先生はじっと聞いていましたが、やはり私のプレゼンのやりかたは最悪だったと、笑いながら教えてくれました。自分は手を上げようと思っていたけれど、顔見知りの先生たちが次々に反発していったので、その場で一人だけOKとは、とても言い出せなかった、とのことでした。

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やはり、そんなにやり方がまずかったんだったんだ、と改めて反省しましたが、では、そんな状況なのに、なぜ彼女は私に共感して、自分の学校に招いてくれたのでしょうか?

 

学校に行こう!と決めたけれど...④

がん教育について

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養護教諭の立場で考えてみると、毎日多忙を極める中で、教育長の指示でとはいえ、半ば強制的にこのプレゼンに招集されたのです。
そして暑い中、汗を拭き拭き会場に行ってみたら、一度も会った事のない大学病院の中年医者が出てきて、突然に「がん教育」の重要性なるものを蕩々と説明し、挙げ句の果てに、「出来るだけ早く協力してほしい、一緒にやりましょう!」などと、暑苦しく要請したのですから、「何だこいつ!」と反感を持たれて当然です。

しかも、信じられないことに、その医者は、一度たりとも、こどもたちに授業など行った経験もないくせに、頭の中で描いた「こんなことを伝えたら、きっとこうなるはずだ!」という図式を、ベテランの教員たちの前で独善的に説明しはじめたのです。

いやはやなんとも.........その場にいらした現場の先生方は、さぞかし不快だったと思います。もし、あのときの先生が、このブログをお読みでしたら、この場を借りて、深くお詫び申し上げます。大変失礼いたしました。

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一方、拒絶された私は意気消沈し、がん教育のことはしばらく考えないようにしよう、と思いました。そして一週間、二週間と時間がたつにつれ、日常診療の忙しさに紛れて、がん教育への熱い想いは、急速にしぼんでいきました。

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ところが、人生とは不思議なものです。

プレゼンから一ヶ月ほど過ぎた、ある日の朝、私にかかってきた1本の電話から、状況は一変します!

初めてこのブログにいらした方は、ぜひ最初からお読み下さい。