「がん」になるって、どんなこと?

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「がん」になるって、どんなこと?

大学病院のがん専門医による、がん教育活動の記録です。

【 5月16日(火) 】週刊女性に掲載されました

本日発売になった、週刊女性のBOOK欄(p103-104)に掲載していただきました。

読者層は、学校に子どもが通う、30代から50代の女性が中心だそうなので、この記事を通じて、がん教育に興味を持っていただければ嬉しいです。

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【5月13日(土)】豊島区立明豊中学校の道徳授業地区公開講座で講演しました④ いまだ興奮冷めやらず・・・

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今回の授業は、小林校長と明豊中学校という、極めて特殊で恵まれた状況下での、特別な企画だったことは間違いありません。今、全国で始まりつつある普遍的ながん教育とは、ちょっと違います。でも、このイベントで私自身も、一生忘れることの出来ない、本当に素晴らしい経験をさせていただきました。授業が終わったときには、口もきけないほど憔悴していましたが、体中が今までに感じたことのないような高揚感と充実感に、満ち溢れていました。

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選ばれた生徒の作文内容や朗読態度にも感動しっぱなしでしたが、小林校長は、卓越した教育者でありながら当事者でもあるという立場から、日本中でも彼にしか言えない奥深い話ばかりを連発するので、私は小林校長の話を聞きながら、言葉に詰まって何度も泣きそうになっていました。

そして、フロアにいる生徒たちの関心・態度や質問意欲やその内容も、私の予想の遙か上を行っていました。通常は、どんなに一生懸命に授業をしても、何人かの生徒は無視したり、つまらなそうにしているものです。ところが信じらないことに、この日は見渡す限りの300人の生徒たちが、一人残らず、じっとこちらを見つめ、私や小林校長の話に一心不乱に聞き入っているのが、壇上からよく見えていました。生徒たちの質問は、先生方が止めなければ、いつまでも切れることがありませんでした。

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医師としてはもちろん、教師としても、この上ない、至福の時間です。未熟な私は授業をしながら、すっかりその場の雰囲気に酔いしれてしまいました。できればずっと授業していたかったぐらいです。生徒たちが、授業を通じて何を得たのか、私には計りかねますが、全ての生徒が、人生を強く生き抜くための何かを手に入れてくれたのではないか、と大いに期待しています。

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明豊中の先生方、職員の方々、生徒の皆さん、お集まりいただいた保護者や地域の皆様、本当にありがとうございました。

これだけたくさんの方々と熱い思いを共有できたこと、小林校長を中心に大きな輪が出来たこと、そしてその輪の中の一人になれたことを、心から感謝申し上げます!

【5月13日(土)】豊島区立明豊中学校の道徳授業地区公開講座で講演しました③ 小林校長の金言

その後は、いつものような内容の、がん教育の授業を始めました。明豊中の生徒たちには、あらかじめ事前アンケートを行って、私が自分で結果をまとめていたので、生徒たちの知識や考え方は、ある程度は把握できていましたが、この日は射抜かれるような生徒たちの真剣なまなざしに、心地よい緊張感を持ちながらの授業でした。

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明豊中の事前アンケートからは、がんを話題にしたことのある家は半分しかないこと、保護者が検診を受けているかどうか、知らない生徒が3分の2もいること、がんになったら家事や仕事が出来なくなると思う生徒が9割近く、生活全てが変わってしまうと考える生徒が3分の2もいることなど、やはりがんに対する生徒や家族の認識が不十分であるということが判明していました。

私はそれを把握した上で、最大の啓発効果が出るような話を心がけましたが、何と言っても、今回のがん教育の宝物は、小林校長の言葉だったと思います。

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私にとっても小林校長は、がん患者として、あるいは教育者として、様々なことを教えてくれる、非常に有り難い存在なのですが、以前から率直に聞いてみたいことがあったので、授業前日にメールで3つの質問をお送りして、授業の中でお訊きしたい、と伝えてあったのです。質問は以下のスライドに示す通りです。

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小林校長の答えは、

1.毎年検診は受けていましたが、去年の検診の時、教育委員会の重要な会議と重なってしまいました。全く元気で何の症状もなかったので、当初は検診を休むつもりだったのです。そうしたら会議の責任者から、いや検診は大切だから、きちんと受けてください、と言われてしまったたので、実はしぶしぶ検診に行ったんです。その結果、何と肺がんが見つかり、しかもステージ4とのことでした。

でも、その後速やかに行った抗がん剤と放射線の治療がうまくいって、今ではCTでも、ほとんど腫瘍の陰がなくなっています。去年の検診では異常なしだったので、この一年間で一気にステージ4まで進行したことを考えると、私のがんは増殖スピードがかなり速いのでしょう。

もし、私があの時に忙しいからと検診を受けていなかったら、きっと症状が出てくるまで、そのまま放置していたと思います。そうしたら、おそらくもう手がつけられないくらい進行してしまって、今ここで皆さんにお話することは出来なかったでしょう。だから、たとえ見つかったがんがステージ4だったとしても、私は検診を受けて本当に良かったと思っています。

 

2.空から鳥の糞がおちてきて、赤の他人の肩に落ちたとしても、きっと注意はしないと思いますが、もし家族だったら、汚れたままで嫌な思いをすることがないように、すぐに教えてあげますよね。事の重大さは異なりますが、がんだって同じです。もちろんがん告知を受けるのは辛いことですが、大切な人を思いやり、ともに生きていくならば、良いことも悪いことも全て伝えて、一緒に笑ったり泣いたりすべきです。黙っていていいことは一つもありません。

 

3.自分は別に無理をして強がっているわけではありません。ただ、前向きに生きようとしているだけです。自分には愛する家族や多くの友人がいて、ずっと自分を支え続けてくれています。そして学校の先生方や生徒たちも応援してくれているから、何も気張ることなく、楽しく毎日を過ごすことができるのだと思います。

確かに、もしがんになったら、自分のように生きることの出来ない方はたくさんいるでしょう。でも、そんな時は、ひとりで悩まないで、周囲の信頼できる人に、自分のことをどんどん話すといいと思います。素直に頼ればいいんです。

がんの悩みは、一人で抱えるには大きすぎますが、だれかに話を聞いて貰えば、それだけで気が楽になります。出来るだけ多くの人に話をして、みんなに助けて貰えばいいと思います。それは決して恥ずかしいことではないし、周囲に励まされているうちに、自分自身に力が沸いてきて、元気になっていきます。私は、そんな自分のサポーターたちに心から感謝していますし、彼らの想いに応えたくて、また今日も頑張ろうと思うのです。

 

これまで30年以上、がん患者さんに接してきましたが、私はこのお答えに、心底敬服しました。特に3番目の質問は、もし実際に患者さんに問われたら、自分では答えようがない難問だなぁ、と思っていたのですが、小林校長の明快な解答で一気に腑に落ちました。本当に素晴らしく、かけがえのない金言を授かりました!