読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

がんになるって、どんなこと?

大学病院のがんセンター長が、子どもたちへの『がん教育』に目覚め、教員免許まで取得して伝えたいこととは?

がん教育を始めたのは、なぜ?③

がん教育について がんについて

f:id:doctor-teacher:20170202230420j:plain私はこれまで30年間、「突然に」、がんを発症して苦しむ患者さんやご家族に、主治医として深く関わってきました。

その中で、数多くの患者さんが、がんに関する予備知識がなかったり、誤った認識を持っておられるために、本来は悩まなくてもよいことを悩んだり、あるいは誰にも相談できずに苦しんでおられることに気づきました。     

 がん専門医とはいっても、自分自身にできることは限られていますが、こんな方々を目の当たりにするにつれ、「何とかして、一般の方々にがんの正しい知識や認識を持っていただきたい!」という気持ちが強くなり、その頃から、市民へのがん啓発を、自分の医者としての活動の大きな柱の一つにしよう、と思うようになりました。

手始めに、勤務先の大学病院のがんセンター主催で、毎月のようにがんの市民公開講座や教育講座などを開催しました。私に共感して献身的に協力してくれるスタッフも集まり、充実した内容の講座がたくさん開かれたのですが、広報活動が十分でなかったこともあってか、実際に参加してくださる市民の方は数えるほどで、いつも残念に思っていました。

患者さんをお待ちするのではなく、こちらから街に出よう、と考え直し、ターミナル駅の構内で、通りすがりの方々を対象のがん啓発イベントを行ったり、繁華街でがんカフェを開いたりもしました。ただ、こういった散発的なイベントは、その時は話題になっても、継続的な啓発という観点からすると、十分な結果を出せませんでした。年代についても、ご自身に危機感のある中年以降の世代には、興味を持ってくださる方々もいらっしゃるのですが、がん年齢になる以前の若い世代の方々には、ほとんど興味を持っていただくことはできなかったと思います。

それならば、と対象を広げ、新聞や雑誌でがん関連の記事を書いたり、テレビの医療ドラマの監修をしたりして、マスコミを通じて可能な限りの啓発活動もしてみましたが、これも反響はおおきいものの、正しい知識の啓発という点では、しっかりとした手ごたえを感じることができなくて、内心、忸怩たる思いでした。

そんなあるとき、中年女性の大腸がん患者さんを診察している際に、私は大きなショックを受けました。抗がん剤の副作用で一気に頭髪が抜け落ちたことについて、いつも一緒に来ていた幼稚園生のお孫さんが、「おばあちゃん、気持ち悪い。」と言うのを目撃したのです。

f:id:doctor-teacher:20170205211301j:plain

当初は「なんて思いやりのない子だ」と憤慨したのですが、よく考えてみると、この子は何も知らないわけで、急に容貌が変化した祖母に違和感を覚えるのは当然です。

私はこの子のようなこどもたちにも、がんについて知ってもらうためにはどうすればよいか、と悩み抜きましたが、あるとき突然、「それならば子供たちのいる学校に行って伝えよう!」とひらめきました。

小学校、中学校、高等学校と、それぞれの発達段階に応じた「がん教育」によって、自分のいのちを大切にすることを学んだ子どもたちは、いずれは他人のいのちを思いやり、国全体の医療をも考えられる大人になってくれるのではないか、と思ったのです。

初めてこのブログにいらした方は、ぜひ最初からお読み下さい。