「がん」になるって、どんなこと?

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「がん」になるって、どんなこと?

大学病院のがん専門医による、がん教育活動の記録です。

2017年授業その4 【 3月4日(土) 豊島区立明豊中学校】と、小林校長との出会い。

1月14日の豊島区立千川中学校での授業を、先生方や保護者の方々に高く評価していただいた結果、近隣の豊島区立明豊中学校からも、日本対がん協会を通じて授業依頼がありました。

f:id:doctor-teacher:20170409094103j:plain

明豊中学校では、としま土曜授業の一環として、中学校2、3年生の生徒が、自分の興味や進路と照らし合わせて、複数の講座から選択して受講する、オープン講座という授業があります。今年の講座は、がん以外にも、科学や法学、オリンピックに関するものなど、8講座とのことでした。公開授業なので、保護者の方も参観されます。

責任者の櫻井威明先生からは、『先生はがんの専門医であるとともに、「がん教育のプロ」だということを伺っています。義務教育を終えようとする子どもたちに、がんや医療についてご講演いただければと思って、ご連絡差し上げました。』というメールを頂きました。

『がん教育のプロ』という領域があるのかどうかは別として、そんな期待をしていただけるのは、外部講師冥利に尽きると思い、快諾しました。

生徒たちは希望する講座を申し込み、人数が多い講座は先生方が調整されるとのことでした。嬉しいことに私の講座には、非常に多くの生徒が興味を示してくれたようでしたが、最終的に受講人数は2年生15名、3年生6名の計21名となりました。

いつものように、事前に櫻井先生と打ち合わせをして、生徒たちにワークシートを配布して、以下の2つの質問に答えてもらいました。授業の際に、このような事前調査の結果を子どもたちに示すと、当事者意識が高まり、授業により集中してくれるようになります。

f:id:doctor-teacher:20170409101501j:plain

f:id:doctor-teacher:20170409101514j:plain

明豊中の生徒さんは、抗がん剤の副作用などの知識もある一方で、患者さんの心の苦しみや生活のことなどを気にかける、という大人の一面も併せ持っていました。質問2に対して、5名が『いつも通りに接する』と解答していますが、通常は中学生の発達段階では、なかなか出てこない高度な意見だと思います。

自主選択授業ということもあり、生徒たちの能力も意欲も十分であることが分かったので、この授業では、通常は高校で行う授業内容を一部流用して、より深くがんのことを考えて貰うようにしました。

この授業はいわゆるアクティブラーニングではなく、講演形式で行いましたが、私の予想通り生徒たちの理解力は高く、充実した授業を行うことが出来ました。参観していた男性教諭に『われわれは国の方針もあり、現在はアクティブラーニング一辺倒ですが、林先生のような、一方向的な講義形式の授業でも、内容がしっかりしていれば、生徒たちはあんなに喰いついてくるんですね。非常に勉強になりました。』と、ありがたいお褒めの言葉を頂きました!

また、2コマ頂いていたので、授業の終わりに5分間だけ、生徒たちに感想文をかいてもらう時間がとれたのですが、その時の生徒たちの集中が素晴らしく、全員が一心不乱に解答用紙に向かい、あっという間に用紙を文章で埋め尽くしてくれました。これは明豊中学校の先生方が、日頃から文章表現力の指導をしっかりと行っていらっしゃるからこそだと思いました。

授業後、控え室に戻って、対がん協会の方とお茶を頂きながら、生徒からの授業の感想文を拝見したのですが、授業によりがんに対する認識が大きく変わった、という意見が多くみられました。たった一日の授業で、これだけ変容してくれるなら、本当にやりがいのある仕事だと、改めて思いました。

@@@@@@@@@@@@@@@@@

「さて、そろそろ失礼しようか。」、と思った時に、校長先生が挨拶に見えました。事前打ち合わせの際に、櫻井先生から、『実は明豊中学校の小林校長も、肺がんで今、病院で闘病中です。』、と伺っていたので、あえて校長先生の話題には触れていなかったのですが、小林校長は、われわれ外部講師や関係者が懇談していた控え室に、スーツ姿にニット帽で現れ、張りのある大きな声で、『実は今、がん治療をしているので、こんな帽子姿で失礼します。』と言って、深々と頭を下げられました。

これが、私と小林校長との出会いです。堂々としたその姿に驚きましたが、この時にはまだ、小林校長が私のかけがえのない大切な友人になるとは、これっぽっちも思っていませんでした!!