「がん」になるって、どんなこと?

「がん」になるって、どんなこと?

大学病院のがん専門医による、がん教育活動の記録です。

手を挙げてくれたのは......③

f:id:doctor-teacher:20170219215634j:plain終末期医療に携わる医療者のなかでも、特に看護師は激務です。患者さんに深く寄り添って看護する一方で、その家族や医師との間で、非常に繊細な調整的役割を担います。そのため、患者さんに対する思い入れが深くなりすぎて、業務の範疇を超えてしまったり、医師との考え方のギャップに悩んでしまうことも多く、患者さんが亡くなったり、医療者間の信頼関係が崩壊した際に、バーンアウト、いわゆる燃え尽き症候群になってしまうことがよくあります。

私の専門の一つは緩和ケアですが、緩和病棟を有する病院では、どこでも、看護師のストレスマネージメントには、非常に苦心しています。

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一般の方からは、「プロなんだから、それぐらい当たり前だろう!」とお叱りを受けそうですが、看護師だって人間です。心が疲れ果てることだってあります。終末期医療に直面し続ける、緩和病棟やホスピスの看護師は、心身の消耗が激しく、現在でも、他の病棟に比べて在職期間が明らかに短いのです。

 

日本看護協会も懸命に彼女らを支えようとしています。全国各地で、緩和ケアや終末期医療に関する研修会を数多く開催しているほか、21分野ある認定看護分野の中に「緩和ケア認定看護師」資格をおき、様々な困難に耐えうる専門職の養成も積極的に行っています。

認定看護師とは、看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める615時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで、ようやく取得できる立派な資格です。2016年現在、全国で約2000名の緩和ケア認定看護師が、自分の病院だけでなく、院外でも活発に活動しています。今後もっと認定看護師が増えてくれば、終末期医療の現場は大きく変わってくるのではないかと期待しています。

ただ、私に声をかけてくれた養護教諭の若林先生は、私とほぼ同年代でした。われわれが医療の世界に飛び込んだ約30年前には、医療職に対するケアなどという概念は存在しませんでしたから、きっと一人で思い悩んだんだと思います。残念ながら、彼女は看護師としては、まさに燃え尽きてしまったのでしょう。

「看護師は辞めても、やっぱり誰かを助けるような仕事がしたくて、しばらく思い悩んでいたんですが、養護教諭への道があることに気づき、一念発起して試験を受けて合格し、それからは30年間、ずっと学校で仕事をしてきました。」

f:id:doctor-teacher:20170219221628j:plain「でも、自分でもどこかに何か引っかかっていました。」

「だから、この前、先生のがん教育のプレゼンがあると聞いた時、説明会に行く前から、うちの学校でやれたらいいなって思っていたんです。」

「やっぱり、もう一度医療の世界にもかかわりたい、って.....」