「がん」になるって、どんなこと?

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「がん」になるって、どんなこと?

大学病院のがん専門医による、がん教育活動の記録です。

【5月13日(土)】豊島区立明豊中学校の道徳授業地区公開講座で講演しました② 生徒の作文に感動!!

この授業は、生徒会の代表による開会の挨拶で始まりました。

まず最初に、春休みの生徒のいのちについての作文の中から、あらかじめ先生方が4名の作文を選び、選ばれた生徒一人ひとりが、壇上に上がって発表しました。私も事前に全員の作文を拝読していたのですが、いずれも立派な作文ばかりだったので、先生方はその中から4名を選ぶのに、さぞかし苦悩されたことだろうと思います。

生徒たちの作文の内容はもちろんですが、朗読態度が実に素晴らしくて、私は校長と一緒に横で聞きながら、終始ウルウルしていました。4名の生徒には、私から質問や講評などさせていただきたい、とお願いしてありましたので、朗読後は舞台の下で座って待機していただきました。

校長先生は聴衆のみなさんに、われわれがなぜこの公開授業を企画したのか、を明確に説明し、私ががん教育に傾注しているがん専門医であることをご紹介くださいました。いよいよ開始です! 私は満員の聴衆の皆さんにご挨拶したあと、舞台を降りて、作文を書いてくれた生徒一人ひとりとセッションを始めました。

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1人目のOさんは、食べ物全てが一つ一つの命であることに気が付いて、『命に対する感謝の気持ち』を忘れないことが大切である、という発表をしてくれました。すごく重要な点に目を向けてくれたと思います。

私:『命に対する感謝の気持ち』というのは、食べ物となって自分を支えてくれた命に対する感謝だと思うのですが、そのほかに、Oさんの命を支えてくれるものには、どんなものがあると思いますか?』

Oさん:まず酸素を作ってくれる植物などがあります。あと、私自身について考えれば、生んで、育ててくれた両親が命を支えてくれています。

私:そうですね、植物だって細胞があって、立派ないのちを持っていますよね。いくらベジタリアンだって、サラダは食べます。Oさんはさらに、植物が酸素を供給してくれていることにも気がついてくれました。ご両親、ご家族、学校の先生方も、みんなOさんを支えてくれましたね。Oさんは更に、『命についての思いが、日常生活に埋もれてしまう。』とも言っていましたね。私も本当にその通りだなと思います。人間はすごく大切な事でも、同じような毎日を過ごしていると、それを当たり前だと思ってしまいがちです。このあと、がん患者さんの思いについて、一緒に考えてみましょう。

 

2人目のSさんは、命の使い方には個性がある、という発表をしてくれました。非常にユニークで鋭い表現だったので、私はどきっとしました。

私:『人生を悲観して自殺してしまう人と、たとえ不治の病に冒されても生きようとする人の違いは、いったい何なのでしょう』と問いかけていましたね。Sさんの結論は、一言で言ったら、どのようなことでしたか?

Sさん:命の大切さを本当に分かっているかどうかだと思います。病気などになれば、限りのある人生をどう生きようか考えると思います。生きることの意味や大切さをしっかり考え、未来を信じることが大切だと思います。

私:スゴい指摘ですね。確かに不治の病にかかった患者さんは、残りの日々をどう生きるかを真剣に考えます。でも、病気にならなくても、私たちの人生は限られていますよね。誰もがいつかは病み、死んでいきます。だから病気にならなくったって、人生をどう生きるかを真剣に考えることが出来るようになったら、一番良いですよね。

Sさん:はい、私もそう思います。

私:Sさんは作文で、『一つ一つの行動の意味を考えながら挑戦していくことで、今までとは異なる、新しい世界がみえてくるのではないか』、と述べていましたが、これは大人顔負けの、素晴らしい提案だと思います。私も本当に勉強になりました。

 

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3人目のNくんは、大好きだったおばあさまが、がんで亡くなったときのことを発表してくれました。その中で、おばあさまが闘病中も、いつも笑顔で周囲を気遣っていた姿が、とても格好良くて、自分は誇りに思うと言っていました。

私:すごいおばあさまだったのですね。孫のN君から見て、そんなおばあさまの元気のもとは、一体何だったと思いますか?
Nくん:みんなに支えられて、みんなの愛情があったからだと思います。
私:Nくんはおばあさまが大好きだったんですね。そんなおばあさまの溢れんばかりの『もらった愛情を、今後は自分の周りの人たちに分け与えて、みんなを幸せにしてあげたい』、と言ったN君の言葉に、私は思わず涙が出ました。それはおばあさまの優しさが、孫のN君にそのまま伝えられていることに感動したからです。素敵な話を聞かせてくれて、ありがとうございました。

 

4人目のUさんは、乳がんで闘病中の、小林麻央さんのブログを読んだ感想を発表してくれました。

私:小林麻央さんは、Uさんの言うように、「生きたい、生きるんだ」、という強い意志の持ち主だと思います。麻央さんのこの強い気持ちは、一体どこから来るのだと思いますか?
Uさん:ひと言で言うと、子どもを守りたいという、母の愛情だと思います。すべての親がそうだと思うのですが、子どもがいるから頑張れる、頑張らなくてはいけない、という気持ちがあるのだと思います。

私:そうですね、母親はもちろん、人間は何か守らなければならない時、すごく強くなります。Uさんは、麻央さんが、自分の弱さとしっかりと向き合えたからこそ、彼女のブログがみんなに勇気を与えた、そしてそれは彼女を支えてくれる家族や周囲の方々がいればこそだ、と指摘していました。ものすごく深い洞察力をお持ちだと思います。麻央さんのことについては、私もこのあと、もう少しお話ししたいと思っています。Uさんも一緒に聞いてください。

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明豊中の中学生たちは、実に素晴らしい感性と洞察力を持っていました!